業務改善と標準化を同時に実現:MS 365業務システム開発

業務改善でのSECIモデルの活用事例と、業務改善環境の日米との差をSECIモデルで考える

  
業務改善でのSECIモデルの活用事例と、業務改善環境の日米との差をSECIモデルで考える
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業務改善でのSECIモデルの活用事例と、業務改善環境の日米との差をSEC...

今日は業務改善活動で知識創造理論のSECIモデルをどう活用するかを書いています。また業務改善の歴史をSECIモデルで見ると日本の「改善」が後れを取っているのが分かり、またどうするべきかも示唆しています。

(動画時間:8:44)

知識創造理論のSECIモデルの基本のおさらい

こんにちは、リーンシグマ、ブラックベルトのマイク根上です。
業務改善コンサルをしています。

以前、知識創造理論のSECIモデルについての動画を配信して大変ご好評を頂きました。
⇒「PDCAだけじゃだめ? SECIモデルも回しましょう!(知識創造理論、SECIモデルの基本)」

今日はその続編でSECIモデルと業務改善活動は密接に関わっていて、
どう使うと業務改善を効果的に実施できるかを話したいと思います。

SECIモデルの詳細は上のリンクの記事をご覧になって頂ければと思いますが、
ここでは簡単に振り返ってみます。

知識は全て個人の試行錯誤から生まれる「個人の暗黙知」から始まります。
しかしこの状態では組織全体に普及しません。
また、会社がサイロ化してたら知識の共有やイノベーションは起きないです。
そこで複数の人が自分の知識を共有する事で、
「個人の暗黙知」が「集団の暗黙知」になり、
それにより新しい知識も生まれます。それが「共同化」です。

しかしこのままですと小さな集団で暗黙知を使っているだけで、
組織全体に広がりません。
そこで会議やワークショップを実施して、
それらの暗黙知を意図的に吸い上げて、
ポリシーにしたりマニュアルにする事で「集団の形式知」に変換するのです。

これが「表出化」です。

次に、ここで出てきた沢山の形式知が
ちゃんと多くの従業員に使われる状態にしたいです。
分厚いマニュアルが机の引出にしまっているのではなく、
必要な形式知を必要な時にアクセスできる様にするのです。
個々人が使うので「個人の形式知」なのです。

ここではITシステムがよく使われ、
形式知を効果的に連結するのでこれを「連結化」と言います。

この「個人の形式知」を使いこなして、
新たな「個人の暗黙知」となり、自分のものになります。
これが「内面化」です。

これをぐるぐる回していくのがSECIモデルなのです。
これにより、どんどん新しい知識が生まれ、
イノベーションが起こり、発展していくのでSECIスパイラルとも呼ばれます。

業務改善でSECIモデルをどう活用するか?

次にこれを業務改善活動と結び付けてみましょう。
実は僕の専門の業務改善手法、リーンシックスシグマのDMAICでは
SECIモデルが自然と実行されるのが分かります。

業務改善活動でのSECIモデルの活用法

業務改善を「個々人の日々の創意工夫」だけに任せておいては
「個人の暗黙知」で止まってしまいます。

やはり重要度の高いテーマを決めて、日々の業務と切り離して
「プロジェクト化」する事で次に進め易くなります。

そのプロジェクトチームに、テーマに適した人材を集めて、
彼らが意見をぶつけ合い、多くの「問題点や解決策」が分かってきます。
これが「集団の暗黙知」となるのです。

それらの暗黙知を更に分析したり優先順位をつけて、
社外の情報も使って、プロジェクトの「成果物の完成」を進めて
「業務のベストプラクティス」を作る事で、
「集団の形式知」になるのです。

今回のテーマと目標を達成するために
改善をする対象業務を特定していますので、
その「集団の形式知」を「対象業務へ落し込み」をして、
それらが各従業員に使われる様に
「SOP(標準作業手順書)を作ったり、業務システム化をする事」で、
各職場で適材適所の知識が確実に使われる様になるのです。

これが「個人の形式知」になり、
それらを「使いこなす」事により「個人の暗黙知」まで
落とし込む事ができるのです。

これにより、飛躍的な業務改善と、仕事の標準化を同時に達成します。
またこの時に必ずPDCAサイクルを回す仕組みにするので、
PDCAサイクルと一緒にSECIスパイラルが起こる様になるのです。

このプロジェクトのやり方が
世界標準の業務改善手法であるリーンシグマのDMAICなのです。

SECIモデルで見る業務改善の歴史

SECIモデルから見てもDMAICは効果的な業務改善手法なのが分かりますね。
次にもう少し大きな視点から、
SECIモデルと業務改善手法の歴史を見ていくと面白い事が分かります。

近代化前は体系化された手法が無くて個々人が試行錯誤をして、
仕事をしていた事は想像に難くないですね。
その当時は誰もSECIモデルなど知らないですが、
結果的にはSECIスパイラルによって業務改善手法は発展してきたのです。

例えば100年前に統計学者のウォルター・シューハートによって
PDCAサイクルが提唱され、
⇒「PDCA分析:データ分析の基本は?やっぱりPDCAサイクルなんです。」

戦後の日本から、エドワーズ・デミング博士によって
統計的工程管理が発達し、
⇒「エドワーズ・デミング – 日本の品質経営の父【カイゼン偉人伝】」

その後、特に大野耐一さんが世界的に有名ですが、
トヨタ生産方式が世界に広がっています。
⇒「トヨタの「見える化」大野耐一語録から考える【トヨタ生産方式】」

ここからの歴史をSECIモデルと照らし合わせてみてみましょう。

SECIモデルで見る業務改善の歴史

今まで沢山の業務改善手法が生み出され、
それらは関係しあって発展してきましたが、
現代の視点でそれらを俯瞰的に見ると
沢山の手法がばらばらに存在し「個人の暗黙知」の状態と言えます。

そこで1980年代に米国で、これまであった多くの業務改善手法の
棚卸と体系化の試みがされたのです。
最初にシックスシグマが誕生し、
その後トヨタ生産方式と融合してリーンシックスシグマが生まれました。
僕はそれをリーンシグマと呼んでいます。
これが「集団の暗黙知」になったのです。

⇒「リーンシックスシグマとは何?【リーンシグマ誕生秘話】(トヨタ生産方式+シックスシグマ)」

その間、米国のGEがシックスシグマを世界的に有名にして、
製造業だけでなく、全ての業界で使える様に改良されて、
それまでの多くの手法を内包し体系化した
「集団の形式知」の状態になったのです。

そして、個々人が学習し、使い易くなる様に
グリーンベルト、ブラックベルト、マスターブラックベルトと言うように
各レベルの資格制度が世界中で誕生して、
世界中で業務改善が勉強され実践さる様になったのです。
まさにこれが「個人の形式知」なのです。

そして社会全体に浸透し 「個人の暗黙知」になっているのです。
次に社会全体に浸透している一例をお見せします。

日本の「改善」が世界から後れを取っている

上図は米国の求人サイトの一例ですが、
英語圏では業務改善をする専門ポジションが多数存在し、
彼らがリーンシグマの資格のスキルを使って実績を出しているので、
それらのポジションにはリーンシグマの資格保持が条件になっています。

この様な状況なので、僕もその一人でしたが、
世界中の初学者達が業務改善の資格取得の勉強をし日々実践をしています。
つまり英語圏では製造業だけでなく、
ビジネス界全体で業務改善のSECIスパイラルが大きく回っているのです。

これがアメリカのビジネス界が発展している一要因であるのです。

最近日本の経営者の皆さんと話をしますが、
業務改善を専門にする部署や職種は設けていないと仰っていて、
また、従業員に業務改善の意欲を持たせるのが大変だとも聞きます。

「改善」は日本のお家芸でしたが、
サービス業も入れたビジネス界全体で考えると
業務改善の発展度合いは日本では英語圏に大きく後れを取っていると感じます。

しかし、逆に考えると、それは成長の余地が沢山ある事だし、
何が必要かも他から学ぶ事ができます。

もちろん、文化や環境が違うので工夫は必要ですので、
ぜひ皆さんと議論をしてお互いの暗黙知をぶつけ合って
新しい形式知を作っていけたらと思っています。

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