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PDCAだけじゃだめ? SECIモデルも回しましょう!(知識創造理論、SECIモデルの基本)

    
PDCAだけじゃだめ? SECIモデルも回しましょう!(知識創造理論、SECIモデルの基本)
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PDCAだけじゃだめ? SECIモデルも回しましょう!(知識創造理論、S...

今日は日本発祥で、世界的に有名になった、知識創造理論のSECIモデルについて話しますSECIモデルの提唱者の野中郁次郎教授のご紹介、暗黙知と形式知の説明、SECIモデルの各ステップについて、また、最近の企業が陥るPDCAサイクルの問題の解決策がこのSECIモデルである事を分かり易く説明しています。

(動画時間:8:59)

知識創造理論のSECIモデルとは?

こんにちは、リーンシグマ、ブラックベルトのマイク根上です。
業務改善コンサルをしています。

僕が参加しているカイゼンオンラインの会の前回の勉強会で
「SECIモデル」が話題になりました。
これはPDCAサイクルほど知られていませんが、
それと同じ位重要だし、
SECIモデルによってPDCAサイクルの問題も解消できるので、
それらの話題をお話します。

まずはSECIモデルについてですが、
これは1990年代に現在一橋大学の名誉教授であられる
野中郁次郎先生によって提唱された
もので、
30年前なので新しい概念ではないですが、
組織的な知識創造理論として本質的で普遍的な理論なので
世界中で、時代を超えて評価されています。

当時日本企業は絶好調で、
その中の成功企業の中に共通して
このSECIモデルが実践されていた事を紹介した
「The Knowledge-Creating Company」が英語で出版されて、
その後、日本語版の「知識創造企業」が出版されました。

野中教授はアジャイル開発のスクラム手法の提唱者でもあります。

これらの功績によって2008年に米紙ウォールストリートジャーナルで
野中教授はアジア人で唯一
「世界のビジネス思想家トップ20」に選ばれました。

ではSECIモデルとは何で、どう仕事に役に立つのでしょうか?
ご存知の様に今、世の中には情報が溢れています。
「情報」が使える状態になったのが「知識」であり、
組織で重要な知識を創造し活用する方法を
分かり易くシンプルにまとめたのがSECIモデルなのです。

SECIモデルにおける知識のタイプ:「暗黙知」と「形式知」

SECIモデルでは知識は二種類あると言っています。
それは「暗黙知」と「形式知」です。

氷山での暗黙知と形式知

これは氷山で考えれば分かり易く、
まず、水の上で見えている部分が「形式知」で、
定義は「言語化あるいは記号化された知識」
で、
実務では研修内容やマニュアル、デジタル化された知識は
みんな形式知になります。

しかしこれはまさに氷山の一角で
知識にはそれ以外の莫大な領域があり、
それが「暗黙知」です

暗黙知の定義は「言語化や記号化が困難な、
その人の身体に深く根差した知識」です。

何となくうまくやっている事や
うまく説明できないコツなどであり、
または自覚がなくやっているコツなどです。

野中先生は
「暗黙知こそが人間の創造力の源泉」と言われています。

有益な暗黙知を多く引き出し、
組織全体で活用する方法がSECIモデルなのです。

SECIモデルの各ステップとスパイラル(螺旋形で発展)

SECIモデルでは暗黙知と形式知があるのを学びました。
実はその他にもう一つの軸があります。
それが「個人知」と「集合知」です。

SECIモデルのサイクル

知識は全て個人が持っている暗黙知から始まります。(上図内①)
そこから集合の暗黙知 (上図内②) に行くのを「共同化」、
英語でSocializationと呼んで、
次の、集合の形式知 (上図内③) に行くのが「表出化(Externalization)」で、
また次の個人の形式知 (上図内④) に行くのが「連結化」のCombinationで、
最後に個人の暗黙知 (上図内①) に帰ってくるのが
「内面化」のInternalizationなのです。

この4つの英単語の頭文字をとってSECIモデルと名付けられたのです。

これだけだとちょっと意味が分からないですね。
各ステップを説明しますが、
会社として、また個人としても、
この4つのステップをよりうまく達成されるには
どうしたら良いかを考えながらお読み下さい。

1. 共同化(Socialization):個人の暗黙知① ⇒ 集団の暗黙知②

最初の個人の暗黙知の状態では、
各自が日々創意工夫をして仕事をしている状態です。
良いアイデアがあっても個人で使われているだけです。

そこで「共同化」によって他の人とお互いに暗黙知を共有する事で
個人の暗黙知を集団の暗黙知に変えるのです。
製造業で日々行うQCサークルはまさにこれですね。

野中先生はここで「共感し合う」事が大事だと言われています。
共感すると行動が無意識に起こり、
次の状態に行き易くなります。

逆に共感無くこの共同化をさせようとすると
この活動自体が形骸化し、次のステップに行けません。
残念ながら最近のQCサークルは形骸化してしまっている
という話をよく耳にします。

2. 表出化(Externalization):集団の暗黙知② ⇒ 集団の形式知③

共同化によってお互いの暗黙知の共有が起こって
良い成果が出てきますが、
会社全体としてはまだ限定的です。

その暗黙知をみんなで使える様に
形式知に変えるのが「表出化」です。

言語化する事で暗黙知が形式知になり、
更に取捨選択、体系化して、マニュアルや、
会社のルール、ポリシーにする事で
会社全体で活用できる準備ができます。
各種見える化もこれに該当しますね。

3. 連結化(Combination):集団の形式知③ ⇒ 個人の形式知④

多くの情報が形式知になったとしても、
それが各個人で使われて成果にならなければ意味がありません。
そこで数ある形式知が組み合わされて、
現実的な新たな形式知になり、
各個人に実践される様にするのが次の「連結化」です。

形式知と形式知が組み合わさって使い易くなれば
更に活用される様になります。

会社としては社内に研修制度を作ったり、
各従業員が必要とする形式知を使うタイミングで見える様に
モデル化やシステム化をすると効果的です。

4. 内面化 (Internalization):個人の形式知④ ⇒ 個人の暗黙知①

形式知を各個人が実践する事で
色んな気付きを得て自分のものにし、
更に多くの新しい暗黙知を得ていくのが最後の「内面化」です。

例えば初めての仕事で最初はマニュアルを見ながら
頭で考えながらしてた作業も慣れてきて
マニュアル無しでできる様になるし、
マニュアルに書いていないコツを見い出したりします。(新しい暗黙知)

SECIモデルの継続で螺旋形で発展

しかし、これで終わってはいけません。
新しい暗黙知から次のSECIモデルを回していくのです。
また、最初は参加していなかった人も
どんどんSECIモデルに参加されれば、
もっと多くの眠っていた暗黙知を形式知に変えていけるのです。

このSECIモデルを回していくと
組織の知識体制が高度化し発展するのをイメージできますね。
また実際にそうなります。

ですから野中先生はこのモデルのサイクルを
「スパイラル」と呼んでいて、
螺旋形で発展できる手法としてまとめたのです。

これは一時の流行りの手法ではなく、
どんな組織や社会での知識創造、発展の法則だと思います。
ですからこのSECIモデルを活用してご自分の仕事や会社で
知識創造の仕組みを確立して下さい。

逆に言うと、成長できていない組織は
このSECIモデルができていません。

PDCAサイクルの形骸化の問題の解決法はSECIモデル

最初に触れましたPDCAサイクルの問題とは、
PDCAサイクルはビジネス界では全国区で有名になりましたが、
本質を理解しないで強制されるとPの計画とCの検証ばかりになり、
肝心のDoとActが二の次になる事です。

DoとActからしか生産性は発生しません。

野中先生も
「日本企業の最近の一番の問題は、
オーバーアナリシス(過剰分析)、
オーバープランニング(過剰計画)、
オーバーコンプライアンス(過剰法令順守)に陥っていることだ。」
と言われています。

引用元:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK11009_R10C14A1000000/

経営ダッシュボードを提唱している自分としても
これは肝に銘じる事です。
⇒「業務改善をする時に経営ダッシュボードも一緒に作りましょう!」

得てしてこういう会社はSECIモデルもうまく回っていません。
暗黙知は行動した時しか得られないからです。

ですからこの問題の解決策は、PDCAサイクルとSECIモデルをいつも一緒に回す事で
PDCAサイクルの形骸化の問題も解消できるのです。

これが今日の結論になります。

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