トヨタの「見える化」大野耐一語録から考える【トヨタ生産方式】
「見える化」とは何でしょう?トヨタ生産方式の産みの親の大野耐一さんの語録からこの「見える化」を考えると本来の「見える化」の本当の意味が見えていきます。図やグラフを作って張り出しておくのが見える化ではない。
(動画時間:4:47)
<< トヨタ生産方式シリーズ >>
第一話:← 今回の記事
第四話:JIT ジャストインタイムとは?分かりやすい説明【トヨタ生産方式】
トヨタの「見える化」の起源は大野耐一さん。
こんにちは、リーンシグマ、ブラックベルトのマイク根上です。業務改善コンサルをしています。
今回も、ある視聴者さんからのリクエストです。
「マイク、日次や月次の生産目標のVisual Management についての動画をやってくれないか?」
Visual Management とは、「見える化」の英語訳です。これが本日のテーマです。まず「見える化」ですが、この概念も「ムダ」や「カイゼン」と同様に日本のトヨタ発で、世界中で使われています。日本でも最近では製造業以外でも使われていて、知らない人は少ないですね。
それだけに本来の意味以外で、例えば図やグラフを作って張り出しておくのが見える化と誤解している人もいますね。そこでまずトヨタ生産方式の産みの親の大野耐一さんの語録からの引用を見てみましょう。
大野耐一さんの「目で見る管理」はトヨタ生産方式の一番の土台
「見える化」についての大野耐一語録
「誰でも一見して判る作業場にせねばならない。品質でいえば不良を表面化し、量でいえば計画に対し、進んでいるのか、遅れているのか見てすぐ判るようにしておくこと。こうしておけば、時間もすぐ判り皆が改善案を考えつく。」
中部インダストリアルエンジニアリングサイトより (2016/5/10)
大野耐一さんはそのころ「見える化」を「目で見る管理」と呼んでました。まさにVisual Management ですね。それが今では「見える化」と皆呼んでいるわけです。
実は、この「見える化」はトヨタ生産方式の一番の土台になります。またさっきの大野耐一語録から見てみましょう。
もし作業場が汚く、整理されていなければ、「誰でも一見して判る作業場」にならないですよね。ここで「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の5Sが必要になります。⇒「5Sって何?5S活動の基本を学びましょう。【トヨタ生産方式】」
「品質で言えば不良を表面化し」とありますが、これは問題が起きればその場で生産ラインを止めてしまうという、「人偏の自働化」のことです。⇒「自働化とは?【トヨタ生産方式】」
「量でいえば計画に対し、進んでいるのか、遅れているのか見てすぐ判るようにしておくこと」は「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」生産する「ジャストインタイム」に繋がるのです。⇒「JIT ジャストインタイムとは?かんばん方式と同じではないです【トヨタ生産方式】」
これらを徹底して行えば「問題もすぐ判り皆が改善案を考えつく」つまり、「継続的改善が続くのだ」ということになるのです。こうして見ると、この「見える化」がトヨタ生産方式の土台になりなるのが分かりますね。
ですから綺麗な図やグラフを作ることが「見える化」では無いのです。現場で起きてることや今まで隠れてしまいがちな事が分かる状態を維持することが、「見える化」なのです。
しかし、図やグラフを作る事が全く悪い事ではありません。「見える化」をする強力なツールになります。ただ、何を何のためにそれをするのかを明確にして行う事が絶対前提になります。これについては「データ分析の基本」の動画で詳しく話しています。⇒「データ分析の基本は?やっぱりPDCAサイクルなんです。(DMAIC: 分析段階)」
日次や月次の生産目標の「見える化」について
もう一度あの視聴者さんのリクエストを見てみましょう。「日次や月次の生産目標の「見える化」について」、と言う事ですが、僕はサービス業務改善が専門ですので、参考になりそうな他の例をご紹介します。
ある卸会社の購買部では担当者の経験と勘で毎回の購買量を決めていました。これだと他の人が代行する時や担当者の変更が難しいですよね。
そこで、各商品の販売量と現在の在庫量を「見える化」して購買量を自動計算出来る様にしたのです。これで標準化も進み、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」購買するジャストインタイムも実現出来ました。
今日は大野耐一さんの語録から本当の「見える化」について考えました。
<< トヨタ生産方式動画シリーズ >>
第一話:← この動画