トヨタ生産方式の二本柱、これでTPSの全体像がわかる
この記事でトヨタ生産方式の家図(体系図)を紹介し、その図を基にトヨタのゴールからTPSの二本柱のJITと自働化から、その他のTPSの各要素を体系的に学べます。各要素の詳細ページへのリンクが付いていてTPSを深く学ぶことも出来ます。
(動画時間:5:01)
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第一話:「見える化」を誤解してませんか?本当の「見える化」とは?【大野耐一語録】
第二話:← 今回の記事
第四話:JIT ジャストインタイムとは?分かりやすい説明【トヨタ生産方式】
トヨタ生産方式(TPS)の全体像が分かる「トヨタ生産方式の家図」
こんにちは、リーンシグマ、ブラックベルトのマイク根上です。業務改善コンサルをしています。
今回はとても難しい動画リクエストを頂きました。
「トヨタ生産方式の全体像を説明する動画を作ってくれないか?」
トヨタ生産方式は多くの深くて重要な内容があります。多くの専門用語が出てきますが各詳細を書いたページをリンクも張ってありますのでトヨタ生産方式を体系的にまた深く学べます。
まず下の図を見て下さい。この図がまさにトヨタ生産方式の全体像を正確に表しています。
この図は大野耐一さんの弟子でトヨタの元会長でもある張富士夫さんが作った「トヨタ生産方式の家図」です。
なぜ家かと言うと家の屋根、柱、土台などの各構造は個別に独立して存在しているのではなく、例えば「人が快適に住む」と言う共通した目的の為にお互いが関係しあって存在しています。この図はトヨタ生産方式の各要素がその様な関係になっているのを表しています。
トヨタのゴールとTPSの二本柱、JITと自働化
まず、屋根に当てはまるのがトヨタのゴールで、「最高品質、コスト最小化、最短のリードタイム、安全第一、高い志気」です。「それをムダを徹底排除する事で工程を短縮して達成する」と定義しています。
家図の中に大きな二つの柱があり、それらが「ジャストインタイム」と「自働化」です。
ジャストインタイム
ジャストインタイムとは「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ」生産又は調達し、ムダを徹底排除するという思想です。そしてジャストインタイムを実現する為のツールが「かんばん方式」や「一個流し方式」なのです。
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これにより工場内の流れをお客の需要に合わせた一定のリズムにし、これをトヨタでは「タクトタイム」と呼んでいて、そのリズムで工場全体がすばらしいチームプレーで稼動しています。
トヨタの人偏の自働化
二つ目の柱の自働化とは「異常が出た時に機械が自動で止まり、品質を工程内で作り込む」ようにする思想です。人偏の無い自動化とは違います。それを実現する為のツールが「アンドン」や「ポカヨケ」なのです。
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ジャストインタイムでは仕掛け在庫が少ないので一部で異常が出て作業が止まったら直ぐに工場全体に影響が出ます。ですので全工程で常に異常が出ない最高の状態を維持することが求められています。
そこで逆説的ですが、異常が出たら製造ラインを止めて直ぐに関係者が駆けつけて異常の根本原因を突き止め、再発防止策を考え標準作業に組み込むのです(下図参照)。これにより自働化は自分の工程を自分達の手で改善していく仕組みなのです。
ジャストインタイムがチームプレーを作り、自働化が改善のエンジンとなる。どちらが欠けてもトヨタ生産方式は成立たないのです。
トヨタの継続的改善を進めていく手段「ムダの徹底排除」
この家の真ん中にあるのが「継続的改善」です(下図参照)。世の中の環境は全てがすごい速度で変っていきます。継続的改善をしていかなければ屋根にあるゴールを達成出来ません。
その継続的改善を引っ張って行くのが「人材とチームワーク」です。実は二本柱のジャストインタイムと自働化にはそれ自体に人材育成が同時にされる仕組みが備わっています。
またトヨタの継続的改善を進めていく根本的な手段が「ムダの徹底排除」です。トヨタではムダの本質を「7つのムダ」として定義して、徹底排除をする為には各ムダの根本原因を突き止める必要があり、彼らは「なぜなぜ分析」を使います。
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- 8つのムダ分析と物と情報の流れ図でムダの徹底排除の仕方【エクセルテンプレート】
机上の空論にならないよう管理職でも現場に出る「現地現物」を実践していて、問題解決の為に「A3報告書」が使われます。⇒「問題解決や企画書としても使えるトヨタが産んだA3報告書【エクセルテンプレート】」
TPSの土台は「平準化」、「作業の標準化」、「目で見る管理」、「トヨタウェイ」
トヨタには「ムラ、ムリ、ムダ」という言葉があります。ムラがあればムリが出てそれがムダを作ります。ですからムラが根本原因なので全ての場面でムラを無くす「平準化」を施すのです。それが家図内の土台になります。⇒「業務フローのサイクルタイムの計り方と平準化の仕方【エクセルテンプレート】」
また上記全てを支えるのが「作業の標準化」であり、「目で見る管理」であり、それが全て「トヨタウェイ」と言われるトヨタの思想が中心土台となっています。
この記事の内容はジェフリー・K・ライカー著の「ザ・トヨタウェイ」から多く参照させてもらいました。一読するのをお勧めします。
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第一話:「見える化」を誤解してませんか?本当の「見える化」とは?【大野耐一語録】
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