カンバン方式 図解で良く分かる【トヨタ生産方式】
トヨタのカンバン方式がテーマで、カンバン方式の成立ちと、トヨタでは実際には「仕掛けかんばん」と「引取りかんばん」の二種類のかんばんを使っていて、その動きを図解で説明しています。
(動画時間:4:33)
トヨタ生産方式のカンバン方式
こんにちは、リーンシグマブラックベルトのマイク根上です。業務改善コンサルをしています。
前回の動画で「カンバン方式はジャストインタイムを達成する為の道具です」、という話をしました。⇒「JIT – ジャストインタイムはかんばん方式と同じではない【トヨタ生産方式】」
実際に「トヨタ生産方式の産みの親」と言われる大野耐一さんもこう言っています:
「かんばんは重要だけれど、あくまでジャスト・イン・タイムを実現するための運用手段だ。だから、かんばんだけを真似しても現場は混乱する。
かんばんを付ける前に工場全体に流れを作らなければならない。また、トヨタ生産システムという考え方を理解しないで、部品にかんばんを付けることには意味はない」
日経ビジネス Digital http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/041800014/101700030/
これを押さえた上でかんばん方式を考えていきましょう。
カンバン方式の起源:大野耐一が米国視察で得たもの
トヨタ自動車の創立者、豊田喜一郎はジャストインタイムの概念はありましたが、それを実現する為の決定的手法は模索中でした。そこで大野はジャストインタイムを実現する工程改革を命じられて米国に行き、フォードやGMの工場見学に行ったのです。
しかし改革のヒントを得たのは彼らの工場ではなく、米国のスーパーマーケットからでした。彼は自分の著書の中でこう言っています:
「スーパーマーケットから得られたヒントとは、スーパーマーケットを生産ラインにおける前工程とみてはどうかということであった。顧客である後工程は、必要な商品(部品)を、必要なときに、必要な量だけ、スーパーマーケットに当たる前工程へ買いに行く。前工程は、すぐに後工程が引き取っていった分を補充する。
こうしてやっていくと、私どもの大目標である『ジャスト・イン・タイム』に接近していけるのではないかと考え本社工場の機械工場内で昭和28年(1953年)から、実地に応用してみた」
大野耐一著『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして―』より
「Push System(押出し方式)」と「Pull System(引張り方式)」
当時の生産方式は各工程で材料や必要な部品があればあるだけ生産してしまうものでした。つまり、工場の情報の流れが前工程から後工程だったのです。英語では「Push System(押出し方式)」と呼んでいます。作業員はあまり考えず、材料が有れば作業をし、仕掛け在庫を増やしていました。
新しい方式では、その流れを逆にしたわけです。すると、前工程は後工程の流れを見ながら仕事をする様になったのです。つまり、各作業員の視野が広がったのです。
これにより作業ラインの横にあった仕掛け在庫が目に見えて減りました。当時はトヨタでは「スーパーマーケット方式」と呼んでいました。英語では「Pull System(引張り方式)」と言います。
カンバン方式の図解説明
新しい工程の流れが出来てきたのですが、新たな問題が出てきました。後工程が予想以上に自分の部品を持って行って、自分の仕掛け在庫切れが多く起きたのです。
ここで考え出されたのが「カンバン方式」です。この「カンバン」は、いつ、どこで、何が、どれだけ使われたかが書いてあるカードです。
下図がトヨタが作ったカンバン方式の概念図です。かんばんには左側の「仕掛けかんばん」 と右側の「引取りかんばん」 の二種類あります。
まず左側の「引取りかんばんAの流れ」です。1)前工程から持ってきた部品を使う時に引取りかんばんをはずします。2)引取りかんばんをもって部品を取りに行きます。3)仕掛け部品についてる仕掛けかんばんを外し、引取りかんばんをつけます。4)引取りかんばんをつけた部品を後工程に運びます。
次が「仕掛けかんばんAの流れ」です。1)後工程に部品が引取られると仕掛けかんばんがはずされます。2)仕掛けかんばんに指示された数だけ部品を造ります。3)仕掛けかんばんを造った部品につけて置場に置きます。この二種類のかんばんが工場全体で回っているわけです。
サービス業務ではかんばんを使うことは無いかもしれませんが、「スーパーマーケット方式」または「Pull System」の考え方はかなり応用できます。
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