業務改善と標準化を同時に実現:MS 365業務システム開発

生産計画の策定/改善プロジェクト(期間別生産計画、QCD、4M)

    
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生産計画の策定/改善プロジェクト(期間別生産計画、QCD、4M)

この記事では業界標準である期間別生産計画を分かり易く説明し、QCD(品質、コスト、納期)の説明とその実務的なKPIの紹介をし、それらを使った生産計画の策定をする改善プロジェクトのやり方をご紹介ます。

(動画時間:10:51)

生産計画の業界標準である期間別生産計画とは?

こんにちは、リーンシグマ、ブラックベルトのマイク根上です。
業務改善コンサルをしています。

最近、僕の知人から生産計画の策定についての質問をもらいました。
中小企業の製造業で生産計画の標準化が確立されていないという事です。
自社の生産計画、生産管理の改善をされたい方や
その担当をされている方に見て頂けたらと思います。

僕の専門のリーンシグマは英語圏では
業務改善手法として世界標準になっています。

その中にDMAICと言う業務改善のフレームワークがあり、
それに沿って業務改善活動をすると、
業界や職種に関係なく業務改善が達成できます。
今回生産計画作業を業務フローと捉えて、
DMAICを使っての改善の仕方をご紹介します。

その前に今回のテーマの生産計画の策定で必須の事項を確認しましょう。
それは製造業での標準となっている「期間別生産計画」です。
DMAICでは最終的に全体最適化された新業務フローを設計するのですが、
その時にこの知識が役立ちます。

期間別生産計画とは生産計画を三段階の
大日程計画、中日程計画、小日程計画で行う事です。

計画は大から小の順番で行い、
その順番でより詳細な計画になります。

期間別生産計画の説明表

大日程計画: 人員、資源の用意をする。

最初の大日程計画は3ケ月から1年の長いスパンで考えて、
粒度は細かくなく月単位で何をするかを考えます。
これを1から3ケ月毎に更新するのです。

この主目的は人員、資源の用意です。
自社に合う実際の期間と頻度を決めて、
毎月の商品毎の需要予測をし、
必要な資金や原材料の調達計画、
人員計画そして設備計画に使います。

中日程計画: 製品と生産数量を決定する。

次が中日程計画の作成です。
計画期間は今後1から3ケ月で、粒度は日単位で、
毎週又は毎月更新します。

主目的は生産する製品と生産数量を決定する事です。
受注予約数と確定数を集計して、
週次あるいは日次の生産数を出し、
それから月次生産計画、人員シフト計画、原材料調達に使います。

小日程計画: 製造作業の割振りと指示書の準備 をする。

そしてこの中日程計画を基に小日程計画を作成します。
計画期間は1週間から1ケ月で、
粒度はシフト時間単位でとても詳細なものになり、
毎日もしくは毎週の更新です。

この主目的は製造作業の割振りと指示書の準備です。
生産ライン、生産目標、人員や材料の配置設計、作業計画をし、
それらから各配置毎の作業指示書を作るのです。

以上が期間別生産計画の全体図でした。
もしかしたら現在、一人の生産管理者が
属人的に仕事をしている会社もあるかもしれませんね。
この期間別生産計画にしたらシステマティックに、
またチームで生産計画ができる様になる
ので、
この手法を参考にして自社の生産計画の標準化をするのにご活用下さい。

生産管理業務の主要KPIはQCD(品質、コスト、納期)

生産計画の策定をする時にもう一つ重要なポイントがあります。
それは生産計画業務の良し悪しを
定量的にどの様に測るかを最初に決定する事です。
それを基に現状分析もできるし、
それを改善活動の羅針盤にするのです。

また、その後の従業員の業績を測るKPIにも
関係してきますのですごく重要です。
それを「業務のKPI」と呼びましょう。

実は生産管理の世界では
この主要な業務のKPIは決まっています。
それはQCDです。
Qualityの品質、コスト、そしてDeliveryの納期です。

これはサービス業でもいえる事ですが、

  • 製品やサービスの品質を上げ、
  • 生産コストを下げ、
  • お客さんのほしい時に納品ができる能力です。

この三つはどれか一つを選ぶのではなく、
その三要素を全体的に向上させる事が必要です。

ですが、この三つはお互いに、どれかを上げれば他のどれかが下がる
トレードオフの関係にあるので厄介です。

しかし、DMAICではムダをなくす事に主眼がありますので、
この三つを同時に向上させる事が可能です。

一方で、強いて優先順序をつけるとQ、C、Dの順番です。

リーンシグマではQCDに関して
一般的に次の様な実務的なKPIがあります。

QCDの実務的なKPI例

今日はこれらの細かい説明はしませんが、
これらの数量を測定し、それを全体量で割った比率や
単位当たりの数量に直して管理していきます。

これらを参考に自社で重要なものを業務のKPIにして、
日常業務から自然と従業員の負担が無いやり方で
そのKPIを測定できる仕組みもこのプロジェクトの間に作りたいです。

それを管理職や経営者用の経営ダッシュボードで使い、
社内のPDCAサイクルを確実に回せる様にするのです。

リーンシグマのDMAICによる生産計画の策定の仕方

次に生産計画の策定をするプロジェクトのやり方を
リーンシグマのDMAICフレームワークで考えてみます。

  • Define: 定義段階
  • Measure:測定段階
  • Analyze: 分析段階
  • Improve:改善段階
  • Control: 定着段階

Define:定義段階

DMAICはそのフレームワークの5段階の頭文字で、
最初のDはDefineで定義段階です。
今回の業務改善活動のテーマや目標を定義し、
プロジェクト期間とチームを決めて
計画を立ててプロジェクト化します。

いつもの日常業務と切り離す事が重要なのです。

そして今回の業務改善をする対象業務を明確にするのに
物と情報の流れ図を使います。

上図が物と情報の流れ図の例ですが、
今回は生産計画の策定がテーマですので、
現状の業務フロー、例えば注文を受注し、生産計画を立て、
必要な原料を確保し、完成品ができるまでの流れ図を書きます。
⇒「物と情報の流れ図の書き方(物と情報の流れ図)【エクセルテンプレート】」

この段階では業務の全体像を把握したいだけで、
詳細を知る事よりも、早く作成をしたいので、
物と情報の流れ図はとても有効です

Measure:測定段階

DMAICの次のMはMeasureで測定段階です。

QCDの実務的なKPI例

これは先ほどと同じKPI例ですが、
この段階で現状を把握、分析をして、
各Q、C、Dを自社ではどのKPIを採用するかを決めるのです。

また、自社の戦略上必要な他のKPIを加えても良いです。
またそれらをどの様に計測できるかも話し合います。

Analyze:分析段階

次のDMAICはAのAnalyzeで分析段階です。
ここで各部署から代表を集めて、
定義段階で作った物と情報の流れ図を見ながら、
現在の生産計画で無駄な作業や、
不足している事、問題点を洗い出します。

やり方のコツは生産管理の4M毎で考える事です。
その4Mとは人、モノ、設備、作業方法です。

  • 人(Man):作業者の配置や技量に問題は無いか?
  • モノ(Material):原材料や道具をもっと改善できないか?
  • 設備(Machine):設備を有効活用されているか? 設備の点検は定期的にできているか?
  • 作業方法(Method):作業方法はもっと改善できないか、また指示書やマニュアルは適切か?

問題点を洗い出したら今度は解決策を上げていきます。
解決策は現場の人がもうすでに持っている事が多々あります。
彼らのベストプラクティスを
うまく吸いあげて必ず感謝し、
褒めてあげて下さい。

また今回の期間別生産計画手法の様に、
世の中にすでにあるベストプラクティスも
調査/検討を必ず行って下さい。

この様な活動は日々行うべきですが、
皆さん日々忙しくてなかなか実行できませんね。
ですからこの様にプロジェクト形式にして
計画的に行う事で効果的に問題解決ができるのです。

解決策が出ない問題や、
他部署間で意見の食い違いが出る事が多々あります。
その時にはなぜなぜ分析をして根本問題まで掘り下げると、
皆が納得する解決策を見つけ易くなります。

最終的に議論した内容を全て一覧にした
「問題解決報告書」を作成するのです。

Improve:改善段階

次のDMAICのIはImproveの改善段階で、
さっきの報告書を元に新しい業務フローを設計します。
前述した期間別生産計画手法も参考にして、
自社の状況に合った生産計画業務フローを設計するのです。

それには設定した業務のKPIを自然に測定でき、
PDCAサイクルが確実に回せるものにします。

この時に再度、物と情報の流れ図を使って大枠を設計し、
その後にフローチャートを使って、
詳細な新業務フローを明確にします。
⇒「物と情報の流れ図(VSM)+フローチャート:最強の業務フローマッピングツール【エクセルテンプレート有料版】」

これで、既存の業務フローと新業務フローが明確になりました。
また各部署からの代表者を集めて
その新業務フローへ移行する移行計画を立てます。
ここで更なる新業務フローに対する
すり合わせができるのです。
そしてその移行計画を実行します。

この時に必要な準備や従業員教育も入ってきますが、
一番効率的にできるのは簡易業務システムを作る事です。
これにより、飛躍的な業務改善と業務の標準化を同時に達成できるのです。

最近はマイクロソフト365や
グーグルの無料ツールでも短期間で
必要な業務システムを作る事が可能です。

Control:定着段階

最後のCはControlの定着段階です。
コストと時間を掛けて改善プロジェクトを成功させても、
時間がたって前の状態に戻ってしまっては
そのプロジェクト自体が無駄になります。

そこでこの段階で今回の改善度が将来も維持し、
更に改善する仕組みになっているかを確認するのです。
その一番の防止策は物理的に元のやり方ができない状態にする事です。

この為にも新業務フローを支援する
業務システムを作る事はとても有効です。

それにより飛躍的な業務改善と業務の標準化を
同時に達成できます。

また、業務データのクラウドへの一元化もできていますので
管理職や経営者用の経営ダッシュボードも作成し、
社内のPDCAサイクルを確実に回せる様にするのです。

これにより改善度の維持だけでなく、
将来に向けての継続的な改善を達成します。

今回は生産計画の策定を例にしましたが、
この様にDMAICは汎用性が高く、
あらゆる業務の改善をするフレームワークとして
全世界で使われています。

皆さんも業務改善がしたい事例があれば教えて下さい。
それをテーマにまた事例動画を作ってみたいと思います。

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