顧客の声を業務改善で活かす、QFD(品質機能展開):前編(VOCの収集から要求項目への変換まで)
今日は新製品開発でよく使われるQFD、品質機能展開を業務改善でどう使うかをエクセルテンプレート上で紹介する前編です。目標設定をし、VOCを集め、親和図法でグループ分けをしてグループ名を付けるまでを図解します。
(動画時間:9:05)
業務改善でも使えるQFD、品質機能展開とは何か?
こんにちは、リーンシグマ、ブラックベルトのマイク根上です。
業務改善コンサルをしています。
僕の会社のサービスの中で
リーンシグマ業務改善ワークショップがあります。
最近、製造業のクライアントさんで、
QFD、品質機能展開もお教えする事になりましたので、
今回そのテンプレートを作りました。
今日はQFDの基本とそのやり方の前編をお伝えしたいと思います。
品質機能展開は英語でQuality Function Deploymentと
言いますので略してQFDと呼ばれます。
今も世界中で使われていますが、
この手法は実は日本で生まれたのです。
QFDは必ず顧客の声、Voice Of Customer(VOC)から始まります。
VOCは顧客の希望が書いてあるだけですが、
それを達成するために何をする必要があり、
どんな機能や性能、仕組みが必要か、それを設計品質と呼びます。
このQFDでVOCを何回か変換していき
設計品質まで変換できるのです。
またその仕組みを達成するためにどんなサブシステムが必要で、
どんな部品や工程にしなければいけないか等、
随時、次の細部のレベルへ展開ができるのです。
だから名前(品質機能展開)に「展開」が入っているのですね。
そしてこれを品質を保証しながら、
つまり、狙った顧客ニーズを達成しながら早い段階で
生産工程計画までできてしまうツールであり、考え方なのです。
QFDの出発はQFDの目的、目標設定から
元々は製造業で新製品開発で使うために
このQFDは発明されました。
しかし、今では製造業だけでなく、
サービスやソフトウェア開発、
またリーンシグマでは主要なツールとして
業務改善にも使われています。
日本語圏ではQFDを業務改善で
どう使うのかの情報が少ないので
今回そのエクセルテンプレートに沿って、
このQFDのやり方をご紹介します。
しかし、通常の製品開発でもこのテンプレートは
使えますので製造業の方も使って下さい。
下図がそのエクセルテンプレートで、
セルB5内にある「手順書の表示」ボタンをクリックすると
3ページの手順書が出てきます。

手順書内右上の「最小化」ボタンで
手順書を最小化し、作業をし易くなりますので、
この手順書を読みながら作業をして下さい。
ステップ1が
「QFDをやる目的、目標を明確にし、セルD4に記入する。」です。
いきなりVOCを集めてQFDを
やってしまう傾向がありますが、
QFDは応用範囲が広いので、目的があいまいなまま始めると
最適な方向に展開できないです。
また最適なVOCも集められません。
ですから最初に目的を明確にするのです。
今回の目的は簡単ではありますが、
「既存の人事サービスセンターの社内顧客満足度を上げる」
でやってみます。
最近知合いになりました視聴者さんから
VOCのサンプルデータを頂きました。
Kyokoさん、サンプルデータありがとうございました!
この手順書には青色のリンクを沢山付けています。
(「セルD4へ→」等)
これで所定のセルに直ぐに行けるのです。
さっきの目的をセルD4に書き込みます。

VOC(Voice Of Customer:顧客の声)を簡潔な要求項目に変換
ステップ2が、
「顧客の声、Voice Of Customer(VOC)を収集し、B列に列挙する。」です。
VOCを集めた後、電子データにするので、
紙面で集めるのではなく、
初めからマイクロソフトFormsなどでフォームを作って
社外の人にもリンクを送って簡単に電子データとして
VOCを集めるといいでしょう。
⇒「マイクロソフトFormsの基本と便利な使い方【初心者向け】」
今回は頂いたサンプルデータをB列にコピペします

これで36個のVOCデータがありました。
これ全ては読みませんが、全て一般の方が書いたもので、
このままでは使えもんになりません。
そこでステップ3、
「下記の方法でVOCを簡潔な要求項目に変換し、E列の水色列に入力する」のです。
具体的な方法を下に書いてありますが、
二、三実例で紹介しましょう。
VOCの最初の「FAQがもっと充実しているといい」とか
「一覧表があると助かります」など(上図内セルB7とB8)
は同じ事を言っているので要求項目を
「FAQや一覧表などを充実させる。」としました。
次のVOCが「欲しい情報がSharePointで見つからない」
(上図内セルB9)と否定文になっています。
こっちの施策として否定の行動は実行できないので、
何がしてほしいのかを考えて、否定文を肯定文にして下さい。
ここでは「SharePointで情報が見つかる。」としました。
次VOCの「SharePoint全般がもう少し検索しやすく」
は前述の要求項目と同じ内容なのでスキップです。
次のVOC(上図内セルB11)はすごく長いコメントですね。
これには手段が提案されています。
その時はその手段の目的を考えて、それを記入します。
そこで「質問をよく理解して正確に回答をしてほしい」としました。
この作業を全てのVOCでやったのが下図になります。
重複を沢山スキップしたので16個になり随分すっきりしました。
これらを要求項目と言います。

親和図法で定性的データをグループ分けする。
次がステップ4で
「親和図法で、変換した要求項目のグループ名をD列に記入する」です。
長い文が入っているB列のVOCによりD列が見難くなるので、
手順書内の「B列非表示」ボタンをクリックします。
するとB列が非表示になり、D列が見易くなります。
するとボタンの名前が「B列表示」になるので
またそれをクリックするとB列は表示されます。
ここで要求項目が並んでますが、
定性的なデータをグループ分けをしてグループ名を付ける事により、
そのデータをより理解でき、扱い易くなります。
これを親和図法と言います。
⇒「親和図法で問題/アイデアを整理しよう。【エクセルテンプレート】」
以前作った親和図法の動画では
テンプレートを使ってますが、親和図法だけなら
エクセルの並べ替え機能だけを使って簡単にできます。
手順書には「各項目と同一グループになる項目に
同じ番号を隣のD列に入れていく。」と書いてあります。
それをお見せしましょう。
まず一番最初はいつも「1」で、
それをブループ名のD列に入れます。
次の要求項目は最初のと似た内容なので
同じグループになるので同じ「1」を入れます。
3つ目は全く違うので「2」にします。
4つ目は情報サイトの問題なので
最初と同じ「1」にします。次も「1」ですね。
6つ目は全く違うグループになるので新たに「3」にします。
この様に全ての要求項目でグループ番号をあてがったのがこれです。

次の手順が
「グループ毎になるようにセルD6のフィルタで並べ替えをする」です。
それを実行したのが下図です。

これで似た者同士が隣り合うので、
グループ名を考え易くなります。
そのグループ名を同じD列に入れるのです。
最初のグループ1から4の名前を次の様にしました:
- グループ1、「オンラインでの情報環境の改善」、
- グループ2、「カスタマーサービスの教育と支援」、
- グループ3、「センターの体制の改善」、
- グループ4、「メール対応の改善」
その結果がこれです:

この様にするとグループ毎に考えられるので解決策を出し易くなるのです。
手順書の右上の「次へ」をクリックしたり、戻ったりできます。
ページ1:

ページ2:

ページ3:

今日はステップ4までやりましたが、
最後のページにステップ9までありますので、
続きは次回の動画でやりましょう。
通常はこの親和図法の作業を
会議室で付箋を使ってやったりしますが、
皆にエクセルの画面をシェアーして
この方法でやった方が遥かに速く完了します。
これなら最近のテレワークの環境でも親和図法をやったり、
このテンプレートでQFDの作業もできてしまいます。
次の記事で本格的なQFDの実演をやりますのでご期待下さい。
「こちらの記事も読まれてます。」