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投資対効果を正味現在価値(NPV)を使って考える。【エクセルテンプレート】

    
プロジェクトの投資対効果を正味現在価値(NPV)を使って考える【エクセルテンプレート】
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投資対効果を正味現在価値(NPV)を使って考える。【エクセルテンプレート...

投資対効果をROI(投資利益率)を使うのは有名ですが、投資回収期間、累積正味現在価値(NPV)も同時に検証した方が良いでしょう。特に正味現在価値に換算する事は大事です。この記事では事例を使ってこの三つの指標を説明しています。

(動画時間:7:27)

ダウンロード  ←これをクリックして「投資対効果分析(ROI, NPV)」エクセルテンプレートをダウンロード出来ます。

投資対効果を示す指標:投資利益率(ROI: Return On Investment)

こんにちは、リーンシグマブラックベルトのマイク根上です。

僕達は業務改善の専門家ですね。課題に優先順位をつけて改善プロジェクトを立てて行っていきます。その優先順位をつけるのに投資対効果を分析するのがすごく有効です。不動産投資や、IT投資などでも同じようにこの分析は使えます。

それぞれのプロジェクトでどれだけお金を使って、どれだけの利益のリターンがあるかを見るわけです。英語でReturn On InvestmentでROIと言い、日本語では投資利益率や投資回収率とも言います。計算式は簡単で、そのプロジェクトで得た利益金額をそのプロジェクトで使った金額で割った%です。

ROI(投資利益率)= 利益金額 ÷ 投資金額 × 100%

例えば100万円使ったプロジェクトで20万円の利益がでたら、20万割る100万で投資利益率は20%となります。この投資利益率を比べて%が高いプロジェクトがより優先順位が高くなるわけです。

ROI = 20万円 (利益) ÷ 100万円 (投資) ×100% = 20%

投資対効果に似た言葉で費用対効果があります。計算方法は同じですが、考え方がちょっと違います。費用対効果はその費用の投下をすればすぐに効果が出る短期的投資で、コストパフォーマンス、いわゆるコスパですね。それに対して投資対効果は投資をして直ぐに効果が出なくても、将来に渡って利益が出る様な長期的投資の事です。

投資対効果分析する必要性、エクセルテンプレートで時短作成

投資利益率の計算式は簡単ですが、実際にやると結構大変です。だれも将来を予測できません。「こんなの計算してもあてにならないでしょう。」と言う人もいます。しかし僕はあえてこれをするのをお薦めします。

実際に金額を出すためには今までのやり方とこれからのやり方を細部まで考えて、場合によっては従業員の賃金まで考慮しないと出てきません。逆に言うとこれをやることでそれぞれのプロジェクトをより深く理解できるのです。

今回もエクセルテンプレートを作りましたので、これに沿ってこの投資対効果の分析方法の説明をします。「投資対効果分析(ROI, NPV)」エクセルテンプレートダウンロード

投資利益率、投資回収期間、累積NPVが投資対効果を見る要

投資対効果テンプレートサマリ

上図がこのテンプレートの最初の表です。このテンプレートでは5つのプロジェクトや投資案件まで比較できます。C列のセルにプロジェクト名を書き、隣の耐用年数は投資対効果を考える期間で、このテンプレートでは最大10年です。

このツールでは「投資利益率」だけではなく、その投資分が何年後で利益に変わるかの「投資回収期間」も出てきます。もちろんこれは短いほど良い投資です。

ここで一つ問題があります。「投資利益率」が高くて「投資回収期間」が短いプロジェクトがあったらそれが一番良い投資なのでしょうか?そうではないですね。単に小さい投資案件なだけかもしれません。

実際にどれだけの利益金額が見込めるかを見るのが次の指標で、「累積NPV」です。NPVは英語のNet Present Valueで、日本語は「正味現在価値」です。

皆さん、今日100万円くれるのと1年後に100万円くれるとしたら、どちらが良いですか?もちろん気が変らないうちに今ほしいですよね。(笑)

もう一つ理由があり、現在の100万円の方が1年後の100万円より価値があるのです。なぜならば貯金しただけで利子が付きますよね。投資は数年単位ですので必ずこの時間による価値の減少分を考慮に入れる必要があるのです。それをしたのが「正味現在価値」です。

正味現在価値(NPV)の計算方法と累積NPVとは?

この正味現在価値を求めるのにその価値の減少分が年率何%かが必要です。それを割引率といいます。例えば割引率が2%で、2年後の100万円の正味現在価値(NPV)はこれになります:

NPV = 100万円 ÷(100%+割引率)の[年数]乗

    =100万円 ÷(100%+2%)の2乗

  =100万円 ÷ 1.0404 = 96.12万円

そして「累積NPV」は耐用年数内の支出(キャッシュアウト)と利益金額(キャッシュイン)を各年数毎に、全て現在の価値に換算した数値の合計になります。

上図の例で言うと30行の年次残高は各年のキャッシュアウトとキャッシュインの合計です。31行でそれを正味現在価値に換算しています。そして32行で現在から将来に向けて(左から右に)累積した累積NPVが出ています。

この例では投資期間が10年ですので、N32のセルが最終累積NPVになり、この金額がマイナスだと投資に失敗した事になり、プラスの金額が大きいほど良い投資になります。

ちなみにこのテンプレートでは割引率をO4:O8の範囲に入力します。また、投資利益率と投資回収期間も両方とも正味現在価値から計算されていて、より現実を反映されたものになっています。

この投資利益率、投資回収期間、累積NPVの各数値により各投資案件を色んな角度で吟味して投資の優先順位を決めて下さい。

累積NPVが一番大事ですが、この数字は耐用年数と金利をいくつにするかによってかなり変ってきますので注意が必要です。

各プロジェクト毎の投資と利益の予想の仕方

上記の三つの指標の計算はエクセルがやってくれるので簡単ですが、もっと難しいのが各プロジェクトの投資額や利益予想額の入力です。この入力がそれらの指標の元データになるのです。

各プロジェクト毎に考え、全て水色のセルに投資金額をマイナスで、利益金額をプラスで入力していきます。N列の上の[+](プラス)のアイコンをクリックすると非表示列が開いて10年分の入力が出来ます。

例としてプロジェクトAは製造機械の投資です。購入金額を「現在」の列に入れて、その後毎年維持費や管理費があればそれも書いていきます。この機械の導入によって新たに人材が必要になったらその人件費もキャッシュアウトになります。

次は利益、キャッシュインを考えましょう。この新しい機械の導入によって古い機械の売却益があればその金額をプラスで入れます。古い機械の維持/管理費がなくなりますので、それもプラスの金額になります。もし新しい機械の維持/管理費の方が安ければそれが利益になるわけです。

その他のキャッシュインとしてこの機械の導入によって新たな売上が見込めればその売上から来る粗利金額も入れます。もし、この機械を導入しなかった時の機会損失があればその分の利益分もキャッシュインに入れられるでしょう。

品質向上や時間の節約とかの評価が難しいですね。品質が向上したことによる売上増分とか、人件費から時間短縮分を金額に換算する工夫が必要になります。

この分析をその後のPDCAサイクルにも使う。

この計算は状況によって変るし、正直正解はありません。しかし関係者で話し合い投資対効果を出すことにより全員の投資案件に対する深い理解が得られるのが分かりますね。

この分析を投資案件の判断材料に使いますが、それで終わってはいけません。数年分の予測がありますのでその後毎年どうなったかのPDCAサイクルに使うのです。その時点でより詳しいデータも出てきますので予測修正したり、反省材料にして次の投資判断の向上に活かすのです。

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