一個流し生産方式のメリットとデメリット、サービス業務への活用のヒント【「リーン農場」本レビュー】
世界でトヨタ生産方式を有名にした「リーンシンキング」という本の中の有名なエピソードから、一個流し生産方式とその対極になるバッチ方式の二つの方式の違いを紹介し、そこから一個流しの基本とメリット、デメリットを理解出来ます。
(動画時間:5:02)
トヨタの一個流し生産方式とバッチ方式の違い
こんにちは、リーンシグマ、ブラックベルトのマイク根上です。業務改善コンサルをしています。
今日のテーマはトヨタ生産方式の中の一個流し生産方式です。一個流し生産方式の対極になるのがバッチ方式です。正直この話題はサービス業務改善にあまり縁が無いと思って今まで取り上げてきませんでした。しかしこの本「リーン農場」では農作業でそれを実践してすごい成果を出しています。
http://www.chelseagreen.com/the-lean-farm
まず一個流し方式とは何でしょうか?世界でトヨタ生産方式を有名にした「リーンシンキング」という本の中で有名な話が有ります。
父と娘である作業の速さを競うのです。その作業は手紙を畳んで封筒に入れ、封をして宛名ラベルと切手を貼る作業です。封筒の数を半分に分けて始めました。娘はそれぞれのステップ毎にまとめてやり、それがバッチ方式です。
父親は一度に全てのステップをやり封筒を一つずつ完成させるやり方です。これが一個流し方式なのです。普通皆娘のやり方でやりますよね。
一個流し方式のメリットとデメリット
しかし先に終わったのは父親の方でした。これは父親の方が動きが速かったからでなく、実はバッチ方式には各ステップで、材料をまとめたり、山を動かしたりとムダな動作が多く入っているのです。これは生産現場でも同じで、バッチ方式では仕掛部品の移動や管理で時間も手間も増えます。
これからも分かるように一個流し方式の方が速いのです。その他の一個流し方式の利点は在庫量を少なく出来る事、完成品が出来るまでのリードタイムが短い事です。その他にバッチ方式だと在庫がある分問題が出てもそれが解決されなくてもプロセスが回ってしまうところ、一個流しだと問題が直ぐに表面化し、問題解決が早くなる事です。トヨタが一番重要視してるのはそれです。
しかしこれは両刃の剣で、問題が多かったり、問題解決能力が低い会社では生産ラインが止まり過ぎて生産性が逆に落ちてしまいます。ある程度業界標準的な品質がある会社がこの手法を取り入れて更なる生産性を上げることが可能なのです。
トヨタの一個流し生産方式の基本とサービス業務への活用のヒント
この一個流しの概念をサービス業務でどう応用すれば良いのでしょうか?ご自分の会社を見て下さい、大部分がバッチ方式でやっている事に気が付きます。社内は部署毎に分かれて仕事をしているし、仕事は普通はバッチ方式でやっています。それが直感的に早いし当たり前と思って誰も疑わないでしょう。先述の「リーンシンキング」ではこう言っています:
「僕らは皆、部門化や分業化する事に対して戦う必要があります。商品が原材料から完成品までに、中断無く作られる時はほぼ常に効率的に正確に作業が行われるからです。」(𝒑𝒈 𝟐𝟐 𝑳𝒆𝒂𝒏 𝑻𝒉𝒊𝒏𝒌𝒊𝒏𝒈 𝒃𝒚 𝑾𝒐𝒎𝒂𝒄𝒌 𝒂𝒏𝒅 𝑱𝒐𝒏𝒆𝒔)
それでは「リーン農場」では一個流しの概念をどう応用したのでしょうか?これについて著者はこう言っています。
「出来る限り店頭で並べられる様に収穫をする。最初は全ての収穫物を加工場所に持って来て後で全ての汚れや不要部分を取り除いてたけど、今は畑で野菜を手に取った時に出来る全ての加工をしています。」「それをする為には野菜を土から配達用の箱や袋に入れるのに必要な物、容器や袋、輪ゴムそして洗浄に必要な物など全て畑まで持っていきます。」(𝒑𝒈 𝟕𝟏 & 𝟕𝟒 𝑻𝒉𝒆 𝑳𝒆𝒂𝒏 𝑭𝒂𝒓𝒎 𝒃𝒚 𝑩𝒆𝒏 𝑯𝒂𝒓𝒕𝒎𝒂𝒏)
いやー、これは驚きです。まさに一個流しの概念を実現していますね。汚れや不要物も畑に残しといても肥料になるだろうし、動きにムダが無いです。しかし彼も全ての状況でこのやり方が使えるわけではないと言っています。ですので常に一個流しを応用出来る方法を研究しているそうです。新しい機材や他の技術を導入すれば、まだまだ出来る事が沢山あると言っています。
やっぱり目的意識を持って考え続ける事が大切ですね。製造業だけに当てはまると思ってたリーンシグマの手法やツールが他にもあります。そう言うステレオタイプ的思考は可能性を縮めますので、これからもっとそういうのを試していこうと思います。
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