ジャストインタイムとは?かんばん方式との違いも【トヨタ生産方式】
ジャストインタイム(JIT)とは何でしょう?この記事ではジャストインタイムの基本、かんばん方式との違いを明確化してそのジャストインタイムが必要になった歴史的理由や他の生産方法との比較からJITを深く理解できます。
(動画時間:4:55)
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第一話:「見える化」を誤解してませんか?本当の「見える化」とは?【大野耐一語録】
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ジャストインタイムとは?
こんにちは、リーンシグマブラッ クベルトのマイク根上です。業務改善コンサルをしています。
以前の動画の中で「見える化」がジャスト インタイムの目的だという話をしました。⇒「大野耐一語録から考える「見える化」とは?【トヨタ生産方式】」
たまにジャストインタイムとかんばん方式が同じ事だと勘違いしている人がいます。他の記事でトヨタ生産方式の全体像を話してますが(トヨタ生産方式とは?トヨタ生産方式の全体像)、その二本柱が「人偏のついた自働化」とこの「ジャストインタイム」なのです。
ジャストインタイムとは「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ」生産又は調達し、ムダを徹底的に排除するという思想です。それにより「ムラ、ムリ、ムダ」を無くし生産効率を向上させる考え方です。
ジャストインタイムの考え方は製造業務だけでなく、サービス業務にも充分通用します。例えば先ほどのジャストインタイムの定義内の「物」を「情報」に置き換えると「必要な情報を、必要な時に、必要な量だけ」になりますし、「人員」に置き換えたら「必要な人員を、必要な時に、必要な量だけ」となりますので、そのまま通用しますね。
「ジャストインタイム」を実現する「かんばん方式」とは?
それに対してかんばん方式はそのジャストインタイムを達成するためにトヨタが作り上げた独特の生産方式であり、手段なのです。平たく言えば、ジャストインタイムが目的でかんばん方式はその道具ということです。⇒「かんばん方式 図解で分かる【トヨタ生産方式】」
さらにいうとジャストインタイムを達成するにはかんばん方式だけやってれば良いと言うのではないのです。会社全体の平準化、小ロット生産化、タクトタイムの導入等、トヨタ生産方式をトータルに実践しないとこのジャストインタイムは実現しません。現にかんばん方式だけを導入して逆に在庫量が増えて失敗したという例も残念ながら多くあります。
今まで何度も言っていますがトヨタのすごさの一つはその成功法則を惜しみなく他社や他国に教えている事です。今では世界中の多くの会社、業界でこのジャストインタイムの思想は広く浸透しています。
ジャストインタイムがなぜ必要か?他の生産方法との比較から
「完全受注生産」
本来のジャストインタイムでは在庫が大きなテーマですが、他にどんな生産方法がありますか?
ひとつは在庫を全く持たないやりかたで、「完全受注生産」ですね。注文が来てから組立てをする会社は多くあります。有名なところではコンピューターメーカーのデルですね。それでも組立てる前の在庫は抱えてます。
原料在庫も全く持たないとすると、注文があってから材料の購買をすることになります。お客に届けるまでの時間、リードタイムがかなり長くなるので、販売機会損失が起きてビジネスになりませんね。
「大量生産方式」
もう一つのやり方は「大量生産方式」です。原材料も価格が安い時に大量に買付をして、ベルトコンベアーを使い大きな設備で大量に生産をして商品一個当たりの生産コストを下げるやり方です。一昔前のフォードはこれで世界一になりました。
トヨタ自動車の創立者豊田喜一郎も米国に行きフォードの工場見学に行っています。フォードの規模と大きな設備に驚愕したのですが、そのやり方は狭い日本では無理だし、豊田家の理念に合わないので別のやり方を模索しました。
大量生産方式の大問題は原材料在庫も、完成品在庫も多く抱える事です。在庫は在庫として社内に残っている限り全く利益を作らないし、保管コストがかかります。
さらに大きな問題は、在庫が多くなれば多くの工程内の問題が発生していたとしても見えないようになってしまう事です。トヨタではこれが一番の問題と考えます。
また、現代の様に商品の流行の流れが恐ろしく速く、多様化している時代に大量の在庫はすぐに不良在庫に変ります。
「ジャストインタイム」
その時代に必要とされているのが「ジャストインタイム」の思想なのです。これにより多品種少量生産を実現出来るし、在庫と販売機会損失をバランス良くどちらも最小にし、無駄な管理コスト、物流コストを省けるのです。
ジャストインタイムの「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ」の考え方を全工程で、もっと言えば全従業員が実践しないといけません。簡単じゃないです。それを可能にしたのが「かんばん方式」です。それについては次回の動画で詳しくご説明します。
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第一話:「見える化」を誤解してませんか?本当の「見える化」とは?【大野耐一語録】
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